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ロールプレイングフィクション『レッドドラゴン』(星海社)


【担当校正者より】
TRPG(テーブルロールプレイングゲーム)――ゲームマスターの司会進行のもと、参加者がそれぞれに考案したキャラクターになりきって物語を進めていく盤上RPG。
本書のタイトルでもある『レッドドラゴン』は、ある参加者たちのためだけに創られた、贅沢にして壮大なTRPGです。

このRPGの物語の軸は、タイトルのとおり<赤の竜>。
突然異変を来した<赤の竜>を巡り、5人のプレイヤーたちがそれぞれの立場と思惑を胸に旅を始めます。
彼らの運命を左右するのは、各自の取捨選択とサイコロの目。
予断を許さない展開に翻弄されながらも、駆け引きや協力、権謀術数を駆使してゴールを目指すプレイヤーたち。
本書には、そんな彼らのリアルな姿が忠実に描写されています。

しかし、本書はいわゆる小説ではありません。
この本を『レッドドラゴン』というゲームのノベライズやゲームブックだと思って読むと、その予想は早々に覆されることになります。
では、小説でなければ何なのか。

私なりの考えをいうと、これは「劇の脚本」――しかも筋書きのない劇の脚本――なのだと思います。
『レッドドラゴン』というのは、ひとつの大きな「劇」であると同時に、その中で演じられる「劇中劇」のことでもあるのです。
キャラクターを演ずるゲームの参加者たちは、まさに劇の演者。
彼らは劇(素の自分)と劇中劇(キャラクター)を自在に行き来しながら、物語を進めていきます。
そして読者は、その演者たちがアドリブによって進めていく劇の観客なのです。

生放送さながらに、私たちの眼前で繰り広げられていく『レッドドラゴン』という劇。
それは、ノンフィクション(現実)とフィクション(虚構)が融合した不思議な感覚を私たちに与えながら、誰も知らない未来へと突き進んでいきます。
あるいはハッピーエンドかもしれないし、あるいはゲームオーバーかもしれない。
旅の先にどのような結末が待っているのか。
「劇」はまだ、始まったばかり――。



最後に、個人的な印象を基に、この物語の登場人物たちを紹介すると――、

10歳にして人生を達観した少女・エィハを演じる、紅玉いづき氏。
巻き込まれ型の癒やし系な少年・忌ブキを演じる、しまどりる氏。
メイドと主従関係が倒錯した騎士・スアローを演じる、那須きのこ氏。
終始揺るぎなく我が道を行く暗殺者・婁震戒を演じる、虚淵玄氏。
そして、物語の鍵を握る謎の人物・禍グラバを演じる、成田良悟氏。

という豪華な顔ぶれとなっています。
役になりきった彼らの台詞は遊びを交えつつも真剣そのもの。
また、ゲームマスター(『レッドドラゴン』ではフィクションマスター)として司会を務める三田誠氏の当意即妙な進行ぶりには、密かなプロの業を感じさせられます。
繰り広げられる会話の妙を、ぜひお楽しみください。

個人的な見どころとしては、虚淵氏演じる婁震戒の「言動」を挙げたいと思います。
彼が何を言い、どう行動するのか、その目でお確かめください。

《文責:幹佳(校閲部)》



『レッドドラゴン』 | 最前線
ロールプレイングフィクション『レッドドラゴン』
シナリオ:三田 誠
制作総指揮:太田克史
制作:星海社

【内容紹介】
すべては、最高のフィクションのために。
『レッドドラゴン』――それは五人が織りなす、六夜の奇跡。

最高のフィクションを生み出すことを目的として、TRPG(Table-Talk Role PlayingGame)のルールをベースに当代きっての作家たちが集い、真剣勝負のセッションを繰り広げるーーそれが、『レッドドラゴン』が目指すRPF(Role Playing Fiction)の世界です。
シナリオを担当し、Fiction Masterとして物語を設計するのはグループSNE出身の三田誠。そして、物語の創造者たるプレイヤーとして名乗りを上げたのは、虚淵玄、奈須きのこ、紅玉いづき、しまどりる、成田良悟の五人。この五人が織りなす、六夜のセッションのためだけに一から設計された完全ワンオフのルールシステムは、三田誠ならびにTRPG界にこの人ありと謳われる三輪清宗、小太刀右京の手によるものです。そして、音楽を担当するのは『FINAL FANTASY XII』『タクティクス・オウガ』の崎元仁。
『レッドドラゴン』は、最高の布陣で最高のフィクションを創造します。
公式サイトより)

東京神楽坂 書籍校閲専門 鴎来堂(おうらいどう)
http://www.ouraidou.net/
| worksouraidou | - | 19:31 | - | - |
『メキト・ベス漂流記 最後の旅』(角川書店)



【校正担当者より】
この作品は前回も読ませてもらっていて、続きが気になる、というか最後まで読んでからもう一度前作を読んだらもっと色んな事を感じるだろうなと思っていたので、横に前二作を置きながら今回の完結編を読むことができて嬉しかったです。
漂流、船団、砲弾などというと、わくわくどきどきスリリングな冒険物をイメージしますが、この作品はそういった魅力も十分に感じつつ、読んでいる間も読み終わった後もなんとなくふわっとした優しい印象を受ける物語でした。(装幀にかなり影響を受けていることは間違いないですが)

校正する上で気を配った点ですが、現在と百年後の未来と過去になった現在が交錯しつつ主人公たちが成長していくというお話なので、今読んでいるのがどの世界なのか、それはどの過去を経てきた、どの未来に行き着く世界なのかを頭に置きつつ読み進めていきました。メキト・ベスは一人称や性別、年齢も変わっていくのでその点にも注意しました。
途中で「あれ?」と思う箇所もありましたが、殆どは自分の読み違えで、「そっかそっか、こうだからこれで正しいんだ」と確認できることがちょっとした快感でした。

私はこの先メキト・ベスには会えないだろうけど、エマやナオの子孫が、もしかしたら祖先が、この世のどこかにいるかもしれないと思うと、とても素敵な気持ちになれます。

《文責:N.K.(校閲部)》




メキト・ベス漂流記 最後の旅 (カドカワ銀のさじシリーズ)

著者:西魚リツコ
版元:角川書店

【内容紹介】
少年少女が世界を守る。大海原の歴史を変える、感動の完結巻!!
スペシダレル伯爵率いる『黒の旗艦』ごと百年後の世界に来てしまったエマとナオ。少年となったメキト・ベスは元の世界へと彼らを戻すため、『王の文書』を手に入れようとする。一行は王の元へ向かうことに!!
版元サイトより)

東京神楽坂 書籍校閲専門 鴎来堂(おうらいどう)
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| worksouraidou | 文芸 | 19:07 | - | - |
『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』(ポプラ社)



【組版担当者より】
皆さんはワインは好きですか? 私は好きです。
では、ワインに詳しいですか? 私は、そうでもありません。だって銘柄とか多すぎて、何がなんだかわからない。どうにかこうにか美味しかったワインの、ラベルのデザインをおぼろげ(どうしても、酔ってますからね……)に覚えている……ような状態なのですが。

このエッセイは、作家の三浦しをんさんが、ソムリエの岡元麻理恵さんを先生として、ワインをより美味しく味わうために、レッスンを受ける……というものです。ソムリエの方に、というと敷居が高く感じられますが、岡元先生は分かりやすく優しい言葉で、さまざまな角度から、ワインについて教えてくださいます。舌触りを例えるためのサンプルに、「舞妓さんの汗拭きガーゼ」を含めてくださったり、相性を知るための食べ物に「カレー」を含めてくださったりと、中流庶民でただの飲んだくれの私にも、分かりやすいし面白い……!
そして三浦さんがまた、ユーモア溢れる文章で、すべての体験についての感想を書かれています。ワインをたとえるのに島耕作が何故? とお思いでしょう。でも読めば何故か納得してしまうのです。そしてそのワインを味わってみたい、と思ってしまうのです。
三浦さんを取り巻く人々もまた、ユーモアたっぷりの面々で面白い。特に、ワインの味で幻想のようなの映像を見てしまうKさんには、是非他の食べ物での感想も聞いてみたくなってしまうほど。
ワインが好きだな、ワインに興味がある、と思う方は是非、読んでみてください。きっとちょっとだけワインが、自分に近いお酒に感じられるに違いありません。

ちなみに、私はこの本を読んで、目隠しして赤と白とロゼを飲み当ててみる、というのを実践してみました。そして一回目は思いっ切り外しました。案外……そう、びっくりするほど分からないものなんですよ……。

《文責:まつを(組版・装丁室)》




黄金の丘で君と転げまわりたいのだ
著者:三浦しをん
   岡元麻理恵
版元:ポプラ社

【内容紹介】
作家・三浦しをんが、ワインのスペシャリストに入門!
「情報を捨てよ、楽しくワインを飲もう」のススメ。

三浦:このワイン、近くのスーパーにある!
   適温で飲むだけで、味がこんなに変わるんですね!
岡元:「赤は室温、白は冷やす」といわれますが、
   日本の室温で飲んでおいしくなるワインはまずありません。

「覚えるのが苦手」な超初級者でも大丈夫。
目からウロコのレッスン続々!
安いワインでもワイングラスで飲めば、3割増しに!
どんな料理とも相性バツグンの万能ワインって?
好みのブドウの品種を見つけたら、大ハズレはない。
絶対失敗しない、目的別ワイン選び。etc.
版元サイトより)

東京神楽坂 書籍校閲専門 鴎来堂(おうらいどう)
http://www.ouraidou.net/
| worksouraidou | 実用書 | 15:09 | - | - |
『OTOMO KATSUHIRO ARTWORK KABA2』(講談社)




【担当校正者より】
いまから十数年前、高校生で、かなりの潔癖症だったころ、「これぞ!」と意気ごんでCDや画集を買うときは必ず2つ買っていた。同じモノを2つ、である。普段使い用と保存用に分けて、普段使い用は本棚に並べておいて気軽にラジカセにかけたり、鞄に放りこんだり友人に貸したりしていた。保存用は内側に布張りしたリンゴ箱に安置して、ときおり押入れから引っぱり出しては新品同様のピカピカ&ツルツルの感触を楽しみつつ、CDに歌詞カードと一緒に付属しているアーティストのスチール写真なんかをうっとりと眺めていた。

もちろんその行為は、高校生のたかがしれた経済活動を逼迫する。CDを1枚新譜で買ったら3000円、2枚で6000円。画集もだいたい同じ。来る日も来る日も、安くて大きいだけのパンを齧って貯めた小銭を握りしめてHMVに行くのだ。同じCDを2枚持ってレジに行くと、大概の店員さんは怪訝な顔つきで「いいんですか?」と目で訊き、私は決然と「いいんです」と小さく頷く。そんな過程で手に入れたブツを、大切に抱えて家路につく。要するに、やや偏執的だったのだ。

大友克洋氏の『KABA2 1990-2011 Illustration Collection』の再校作業をしていたとき、赤字照合をしているときも、素読みをしているときも、どうしてか、高校時代の記憶が蘇ってきた。本当にほんとうに欲しいものを手にした時、それは熱を持っていて、さわると温もりがあって、店のビニール袋ごしに鼓動を感じることができる気がする。
この本は、「2冊買い」する誰かがいてもおかしくない本だ。ゲラを開いた途端に、それが分かった。

ゲラに収録されたイラストは1点1点、AKIRAも、スチームボーイも、自転車モノも、BATMANも、大砲の街も、すべてがびりびりするような熱に溢れている。50×100センチにも及ぶゲラは個人デスクにはとても収まりきらなくて、ライトテーブルに広げて作業をしていたら、脇を横切っていく誰もが大友氏のイラストに視線を奪われて、横目でチラリチラリと盗み見ていく。「それ何のゲラ?」と訊かれて「大友さんのイラスト集」と答えると、「すごいね」と納得したような顔になる。

この本の引力は、並ひととおりのものではない。最初から最後まで、どのページを開いても、「えっ」とか「うわぁ」と呼吸が一瞬止まってしまうような緊張感と驚きと、圧倒的な美しさが飛びだしてきて、息をこらして前のめりになってしまう。表紙の革ジャンのイラストからして、缶バッジとジッパーに施された加工がまた心憎いくらいに効いていて、隅々までこだわりぬいて作られているのが分かるのだが、贅沢なのはp191からの「A Talk About Creating」と題された、創作について語る大友氏のコラム。自転車と創作、画材の変化、マンガと映画の取り組み方の違い……と創作にまつわるあれこれを淡々と語っているエッセイを読むと、絵を描くことだけにとどまらない「モノづくりの本質」の一端を窺い知ることができたような気がする。

校正者としてこのイラスト集の再校作業をするにあたって、「誰かの『2冊』となりますように」と心から願いつつ取り組んでいたが、画集ならではの校正裏話とか、苦労話はここでは書かない。だって、そんなコトを書いてしまって、この本の瑕ひとつない素晴らしさを損ないたくないから。

代わりに、個人的なお気に入りベスト3でこの文章を締めたい。

 ベスト1:「舞踏家・麿赤兒」(イラストセクション所収)
 →緑の肉体と赤い花のコントラストに痺れる。

 ベスト2:カミーユ・クローデルの彫刻の落書き(p198)
 →ラフデッサンなのに、そこに「物語」を感じてしまう。
    
 ベスト3:モノ・マガジン自転車特集の柴犬のイラスト(p69)
 →自転車と柴犬の組み合わせの意外性にキュンとする。

《文責:S.K(校閲部)》





OTOMO KATSUHIRO ARTWORK KABA2
著者:大友克洋
版元:講談社

【内容紹介】
AKIRA完結前後から2011年までのイラスト・カット・設定画を集成
描き下ろし、初公開を含む数百点を収録
●イラストセクションには「AKIRA」「STEAMBOY」を始め漫画・アニメ・CDのカバーやジャケット、「ジロ・デ・イタリア2007」をルポしたロードバイクイラストなどカラーイラスト約80点を収録
●カラー漫画2本立て! 「BATMAN The Third Mask」&「ORBITAL ERA」
●アニメセクションでは「AKIRA」に続く大作として構想された劇場アニメ企画「塔」の設定画を20年ぶりに公開! アニメ「老人Z」「最臭兵器」「GUNDAM : Mission To The Rise」「FREEDOM」「鬼神伝」やTBS・後楽園ゆうえんちTV-CFの設定画・絵コンテを著者解説入りで収録
●特別企画「絵本 大砲の街」一挙32p!
●鎧犬シリーズ、年賀状干支カットなど未公開作品、お蔵出し!
版元サイトより)

東京神楽坂 書籍校閲専門 鴎来堂(おうらいどう)
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| worksouraidou | 画集 | 15:58 | - | - |
『武器としての決断思考』(星海社新書)



【担当校正者より】
先生が生徒の席と席の間を歩きながら話すことや、黒板に書いたことを

大事なところは太字にしたり赤ペンで記したり四角く囲ったりと

後で見た時にわかりやすく楽しくあるように自分なりに工夫してノートにまとめていく……

読んでいて、そんな学生時代の授業中の風景を思い出しました。



この本は、生きているとどうしてもぶち当たってしまう様々な「決断の時」に

どんなふうに考えて進んでいけばいいのかというヒントを「武器」として読者に与えてくれます。

ただ、その与えられた「武器」をどう使っていくのかは自分次第なのですが。



今回私は再校を担当しました。

再校では前校(初校)に加えられた赤字の指示を反映させた状態のもので素読みをするのですが

そのためにはまず、「赤字照合」という作業をしてからになります。

赤字の指示通りになっているか、その赤字の傾向によって統一すべき表記はないか、

新しく挿入された文章内に事実確認が必要なものはないか、などをチェックしていくのが「赤字照合」です。

この本の赤字照合では、初校時にはなく再校で初めて入ってきた図版が

載せる位置も含め本文ときちんと合っているかということや

キーワードとなる言葉がいくつかあったので、その言葉の使われ方や表記の揺れなどにも気をつけながら作業しました。

いろいろな要素がギュッと詰まっている「赤字照合」は

再校を素読みしていく自分への手掛かり(ヒント)=「武器」になるわけです。



……と、無理矢理結びつける感じで終わりにしたいと思います。

《文責:N.S.(校閲部)》


◆こちらの記事もどうぞ!→鴎来堂ブログ『武器としての決断思考』




武器としての決断思考 (星海社新書)

著者:瀧本哲史
版元:星海社

【内容紹介】
東大×京大×マッキンゼー式・決断の技術!教室から生徒があふれる京大の人気授業「瀧本哲史の意思決定論」を1冊に凝縮。これからの日本を支えていく若い世代に必要な「武器としての教養」シリーズ第1弾!
「本書は、私がいま、京都大学で二十歳前後の学生に教えている意思決定の授業」を一冊に凝縮したものです。今後、カオスの時代を生きていく若い世代にいちばん必要なのは、意思決定の方を学ぶことであり、決断力を身につけることです。もう過去のやり方は通用しないし、人生のレールみたいなものもなくなってしまいました。「答え」は誰も教えてはくれません。となれば、自分の人生は、自分で考えて、自分で決めていくしかないのです。仕事をどうするか、家庭をどうするか、人生をどうするか? この本で私と一緒に「自分で答えを出すための思考法」を学んでいきましょう。きっと、あなたの人生を変える授業になるはずです。」(版元サイトより)

東京神楽坂 書籍校閲専門 鴎来堂(おうらいどう)
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